こんにちは。
元JICA海外協力隊(旧称、青年海外協力隊)として約2年間、アフリカで国際協力の最前線を経験した「学ぶ猿」です。
同ボランティア制度に参加した後、友人や知り合いの方から、
「国際協力」って結局何なの?
と聞かれることが最近多いです。
確かに、その言葉自体なかなか聞きなれないですよね。
世界的には国連(UN)、日本だと国際協力機構(JICA)等、一般には知れ渡っていない組織名も多く登場します。
アフリカの南部で、青年海外協力隊員として実際に国際協力に携わった(協力隊のメリット・デメリットについては、別でそれぞれ解説)、私が実体験を踏まえて、わかりやすく解説いたします。
本記事を読めば、「国際協力」の主要な5つのアクター(国際協力の就職先とも言えます)を理解することができます。
将来、どのアクターとして国際協力に携わるか、その参考となりますよ!
結論:「国際協力」の定義
様々な専門家の書籍や意見も参考にし、私が実際の現場の経験して、国際協力とは以下のように定義づけできると思っています。
即ち、「国際協力とは、国やその他の組織・団体が他国に対して行う援助活動の総称」
その中で、以下の2つに分類できます。
①自然災害や戦争時等の突発的な出来事に対する支援=緊急援助 |
②自然災害も戦争もない、平時に外国人らが各途上国の地域へ行ってニーズに合わせて援助を実施=開発援助 |
国際協力の種類
ここで種類分けした、緊急援助と開発援助について、説明していきます。
緊急援助
これは、地震等の災害がわかりやすいかと。
日本もJICA等を通して、各国の災害に緊急援助チームを派遣しています。
例えば、ネパールでの大地震や最近では、トルコ大地震への緊急援助等があります。
目の前に困った人たちがいる時に手を差し伸べる活動で、「きれいな」イメージのある活動ですね!
これは、日本のような外国人が被災地を訪問し、現場で必要とされるあらゆる活動を行うことを指します。
例えば、
●警察や消防関係者が被災者の救助を行う
●医者や看護師等、医療従事者が必要な医療活動を行う
●JICA職員らが必要な物品の手配や人員の整理(ロジスティクス)を行う
●水や食料、毛布等被災者にとって、必要となるあらゆる物品を配給する
等の活動が挙げられます。
緊急時ということもあるので、外国人の価値観で外国人が主導して行います。
他方、大地震のような緊急性や必要性の高い時に援助を行うので、現地の方からは非常に感謝される、やりがいのある援助活動です。
今回、2023年のトルコ大地震の緊急援助に携わったJICA関係者からお話を聞いたところ、
●街を歩くたびにトルコの人々から感謝を伝えられた
●必要な物品を購入しに、被災地から離れた街へ行くと、「日本の緊急援助チームならお金はいらない」或いは、「緊急援助チームが必要なものなら割引する」等と温かい声をもらった
●帰国する際、多くの被災したトルコ人たちから握手を求められた
等という体験をしたそうです。
他方で、どこまで綿密に計画を立てて、出来る限りの救助活動をしても被災者の方々の不幸を目の当たりにする活動です。
関係者の方々は、
●「やり切った」とすがすがしい気持ちにはなれなかった
●(帰国する際)他にもやれることはなかったのか?等と自問自答を繰り返した
等と葛藤を口にされていました。。。
開発援助
これは上記の緊急援助とは異なります。
自然災害も、戦争もない、ある程度「平穏な状態」で外国人が途上国へ訪問し、そのニーズを把握した上でその地域の人たちが望む援助(プロジェクト)を実施します。
基本的には、外国人主導ではなく、途上国の人たちが主役です。
大雑把に分けると、日本のような先進国が途上国へ向けて
①お金を出す場合
②技術を教える場合
という2パターンがあります。
①のお金を出す場合は、更に以下のように2つの分けられます。
有償資金協力(低金利で途上国資金を融資する協力) | =お金を借りた国は返還義務があり |
無償資金協力(資金を贈与して、必要な援助を行う) | =お金を受け取った国は返還義務なし |
例えば、途上国で感染症が広がっている、あるいは地域の人が身近に訪問できる病院がないという課題解決のために、「病院をつくる」というプロジェクトが発足します。
このような場合は、有償(返還を伴う資金協力)か無償(返還を伴わない資金協力)で日本側が資金を途上国へ提供し、民間企業がその資金を基に「受注(インフラ建設を請け負う)」ことになります。
この時、病院という「箱」を提供するだけではやはり不十分です。
そこで
●病院運営のためのコンサルタント等の専門家を配置する
●あるいは、ノウハウを教えるために看護師等の医療従事者を派遣する
ことを通して、技術協力を行います。
猿の体験した、JICA海外協力隊(青年海外協力隊)も日本のやり方やノウハウを現地住民の方へ教えるという意味では、この技術協力に近いものがありますね。
国際協力のアクター
次は、国際協力のアクターを5つに分けてご説明します。
個人の力だけで、途上国で活動するということを除いて、下記5つの組織の一員として行うのが基本です。
この5つのどれかの職員になり、国際協力を行うことには、どれも一長一短あります。
私は、アフリカ滞在時、全てのアクターの関係者からお話を直接聞いております!
今回は、このような5つがあるということを頭に入れ、近い将来、自分がどこの組織に属して国際協力を行うのが一番良いのか、そのヒントにしてみてください!
国連関係機関
わかりやすい例が国際連合、略して国連(UN)です。
現在、196各国が少しずつ分担して資金を提供し、国際問題の解決のために議論、行動します。
ユニセフ等その関連組織の職員として働くという道です。
【特徴】
①国連関連の比較的大きいプロジェクトに携わることが可能。
②国際社会の最前線で、世界中の優秀な人と議論するチャンス、人脈を作るチャンスがある。
③地域やポストによるが、給料も高く、安定した収入を得ることが出来る。
④例えば、正規の国連職員を目指す場合、IELTS7.5以上等の高い英語力(+@でフランス語やアラビア語等他の国連公用語も求められる場合も)、修士号以上の専門性、更には国際的な舞台で2年以上の実務経験が必要と、就職のための壁が高い。
⑤基本的には、1-4年ごとの契約ベース(有期雇用)の仕事。
このため、毎回空席のポストを探し、就職活動をする必要があります。
ここが難点ですね。
ただ、国連機関のキャリアは、その後のキャリアでも有利になるようです!
例えば、元国連職員の大学教授という方は日本に多くいらっしゃいますよ。
※元国連職員ということで、「箔が付く」ということですね。
各国の政府
日本で言えば、わかりやすいのが外務省の職員です。
外務省は、政策や予算編成、方針等を決めます。
外務省職員は、政府開発援助(ODA)に関する政策・方針決定のために仕事をするわけです。
そして、それを基に各国の関係省庁の人と実際にやり取りして、プロジェクトの案件を作るのが独立行政法人国際協力機構(通称、JICA)であり、その職員です。
【特徴】
①外務省職員やJICAの正職員(国家公務員級)は、基本的には定年まで働くことが出来る。
②一方、外務省職員は、国際協力に関連しない、その他の外交関連の部署で働くこともある。
③国家公務員級の職員ということで、一説には平均年収800万円越え、という高年収の中、国際協力の仕事に携わることが可能。
④一方、国家公務員級の職員のため、基本的に組織の出す「辞令」に従わなければならない。
よって、あまりは自由はない。
例えば東南アジアの案件を担当したかったのに、
アフリカ関連の部署・あるいは事務所へ行く等という
本人の希望と異なる部署で働かざるを得ない場合も!
⑤基本的に事務仕事が主であるため、出張等で途上国の現地に数日間訪問することはあっても、その最前線で現地の人と共に仕事をする機会がない。
民間団体
例えば、独自の資金源やJICAが委託する仕事を受注する等して、途上国のニーズに合わせて、現地の人々と共に活動するNGO/NPO法人等がこれにあたります。
アフリカ滞在中、きれいな水が身近にないばかりに、汚い水を飲まざるを得ない地域にきれいな水の出る井戸を掘る、水道設備を整える、現地の人々に衛生知識を教える等の活動を行っている団体さんに出会いました。
【特徴】
①基本的に、各団体が自由度高く、自分たちの想いでニーズに合わせた、国際協力活動を行うことができる。
②他方、NPO/NGOのトップの想いと職員の想いに大きくずれが生じ、衝突することもある。
(例:トップがこうしたい!となっても職員が「それは当団体のビジョンに合わない」等と反対意見も出て衝突する等)
③概して政府系団体職員と比べれば薄給で、30歳手前でも年収は200万円台という話も。
(将来的に安心して働ける環境ではない)
④有期雇用もよく見かける。
⑤福利厚生も整っていない組織が多い。
各企業
例えば、大手ゼネコンの民間企業社員として途上国へ3-5年ほど赴任し、ODA関連のプロジェクトのために、現地の人を雇いながら病院や道路を建設する等の携わり方があります。
【特徴】
①アフリカに特化した製薬会社等、特定分野の民間企業でない限り、途上国に関わり、開発分野の仕事をする機会は多くはない。
②総合商社等の社員として、今後人口が増え、経済発展の見込まれるアフリカ等で「ビジネス」に携わりながら、一部ODAの開発案件に従事することはあり得る。
③部署やアイディア次第では、途上国の人が作ったものを日本で売る「フェアトレード」等現地の人の収入増加のために働くことが可能。
④各企業により異なるが、NGO/NPO職員に比べたら、総じて年収は高め。
⑤各企業によるが、基本的に「辞令」によって、部署が決まるため自由度は高くない場合が多い。
宗教団体
ある宗教団体の職員として、貧しいアフリカ諸国に訪問し、その資金で学校を建て、教師を雇い、子どもたちに教育を提供する等、NGO/NPO職員と同様の活動をしているという話もよく聞きます。
一方で、宗教団体の職員なので、教育も提供するのと同時に子どもたちや親へも布教活動を行うようです。
宗教活動も含まれているので、該当団体に対する一定の理解は勿論のこと、信仰心も必要ですね。
【特徴】
①宗教団体職員の一員として、途上国へ赴任するため、国際協力活動を行うと同時に、布教活動もセットになる場合が多い。
②宗教法人の資金次第では、現地のニーズに合わせた、自由度の高い活動が可能になる。
③信仰心がなければ、活動そのものが苦痛となる場合も。
④年収は、NGO/NPO並みに低い(あるいは、それ以上に低い)場合が多い。
まとめ
5つのアクターの特徴やエピソード等は、猿がアフリカ滞在時に見聞きしたものをベースに簡潔に記載しています。
今回の記載に当たって、山本敏晴さんの書籍(「国際協力」をやってみませんか?)も大いに参考にしました。
こちらは、一時期「青年海外協力隊のバイブル」とまで呼ばれた名著です。
このブログと合わせて一読することをお勧めしますよ!
また、今回は5つのアクターということで組織的な国際協力の形を紹介しました。
個人の活動としては、そのような団体への「寄付」という国際協力の形もあります。
是非、色々と本を読んで勉強しながら、自分なりの関わり方を見つけてみて下さい!
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