こんにちは。
青年海外協力隊(現、JICA海外協力隊)として、アフリカ南部のザンビアで実際に活動し、国際協力の最前線を経験した「学ぶ猿」です。
青年海外協力隊は、JICAボランティアとも言われたりしますね。
前回まで、青年海外協力隊に参加する6つのメリットについて、解説しました。
前回の記事でも触れているように、基本的に「国際協力」に興味があり、参加する時の年齢が若ければ非常におすすめできる制度です。
※国際協力について、改めて勉強したい方には「5つのアクター」をこちらで紹介しています。
一方、この青年海外協力隊の制度に完璧はなく、いくつかのデメリットがあることも事実。
ご家族の事情、ご自身のキャリア形成等の理由から、メリットよりもデメリットの方が大きい場合もあります。
本記事では、青年海外協力隊に参加するデメリット4つを解説し、猿が考え付く限りの解決策をご紹介します。
途上国でのボランティア活動の前に、この記事を是非ご覧下さい。
JICA(日本国際協力機構)の公式HP等からは、あまり周知されない、経験者だからこそ感じたデメリットを理解することが出来ますよ。
結論~青年海外協力隊に参加しない方が良い人
冒頭にあるように私は、アフリカ南部のザンビアという国の小さい村で、実際に村人と同じように生活し、ボランティア活動を行ってきました。
ボランティア活動を通して感じた、「国際協力に興味を持っていても、青年海外協力隊に参加しない方が良い方々」を以下のように挙げたいと思います。
①2年間の途上国生活について、家族やご自身のキャリア形成を考慮し、「長すぎる」と感じる方
②「帰国後、年収を上げたい」、「新NISA含め資産形成を加速させたい」等と考える方
③途上国の人々の行動や考え方を「尊重する意思のない」方
(日本の考えを絶対視してしまう方)
④病気や事故・事件に、「絶対に」巻き込まれたくないと思う方
残念ながら上記に当てはまる方は、デメリットがメリットを上回ります。
同ボランティア制度への参加はおすすめできません。
以下では、これらの①~④に沿う形で、青年海外協力隊に参加のデメリットを解説し、その解決策も提示していきます。
とはいえ、これら4つに当てはまる方々は致命的です。
逆に、
途上国での生活や青年海外協力隊のようなボランティア活動に不安はある。
でも、必ずしもこの4つには当てはまらないぞ!
という方は、参加を検討する余地ありです!!
青年海外協力隊(JICA海外協力隊)に参加するデメリット~4選
途上国でのボランティア生活は、原則単身で2年
2年間の途上国生活
いやいや、JICAHPにも載ってるし、わかっている!
とツッコミ受けそうですが、解説させてください。
要は、あなたやそのご家族が「この2年間を如何にとらえるか?」が重要ということです。
ITの発達した時代といえど、猿のようにアフリカの田舎での生活となれば、インターネット接続も日本のように早いという保証はありません。
「任国外旅行制度」というものがあり、1年間に20日間以内(2020年当時)であれば、その赴任国以外の国(日本も含む)へ行き、恋人や家族に会うことも可能です。
しかし、青年海外協力隊に参加すれば、基本的にはその途上国で2年間、ボランティア活動に従事することが必要です。
税金をもらって、ボランティア活動に従事する以上、これは仕方ないことです。
「2年間なんて意外と早く過ぎる」
「2年間というたっぷりの時間を使って、途上国に貢献できるし、その間に自分の人生も考えることが出来る」
等2年間についてポジティブに解釈できる方なら問題ないでしょう。
一方、
「恋人・配偶者・婚約者を日本に残して別々に生活するには、2年間は長すぎる」
「2年あれば、他の企業や自治体の職員として別の経験が出来そう」
等とネガティブに解釈するなら、2年間はデメリットとなります。
猿と一緒に訓練を受けた同期に、結婚したばかりの方、あるいは婚約したばかりの方々もいました。
日本へ帰国後、問題なく結婚生活を再開されてお子さんまで出来た方を数人知っています。
一方で、「やっぱり、恋人や婚約者と別れたー(泣)」等という方々も同じかそれ以上知っています。。。
解決策~話し合いとキャリアの再定義
①「2年間」について、周りの人と良く話し合う。
結局日本へ帰国後も上手くいっている方々は、周りの人と「2年間」について、良く話し合ってる印象を受けます。
②自身のキャリアを再定義する
次のデメリットでも紹介しますが、日本へ帰国し、普通の自治体や企業で働こうとした場合、「途上国でのボランティア経験」があまり役に立たない可能性もあります。
この辺はJICA公式HPの説明にはあまりない話ですが、現実です。。。
実際、2020年の新型コロナ発生で一斉に世界中の青年海外協力隊参加者が帰国。
その後、途上国再赴任をあきらめ、日本で再就職活動を行った人が多くいました。
個人の能力にもよりますが、総じて苦戦していましたよ。
ある方は、50社受けてほどんど書類選考落ち、数社面接に進んでも、青年海外協力隊に関する質問をほとんど受けなかったようです。
途上国での2年間について、ボランティアに参加する前から「自分のキャリアの中でどのような意味があるのか」情報収集や整理等をしておくべきです。
信頼のできる、エージェントさんに聞いてみるのも手ですね!
帰国後年収アップするとは限らない、海外生活中は資産形成の上でも不利
帰国後の年収アップや海外渡航中の資産形成は難しい
「JICAはこの10年ほど非常に頑張って、同ボランティア制度の認知度を上げた」、「帰国ボランティアに対するサポートもある程度充実している」と猿は考えます。
例えば、この公式HPです。
一方、2年間の活動を終えた帰国ボランティアの年収等については一切言及していません。
猿自身も大学卒業後、高額の奨学金(約500万円)を背負っており、この点は非常にシビアに考えていました。
JICAボランティアの参加者のほとんどは、帰国後、日本の企業や自治体等へ再就職します。
(国連機関への就職を目指す人もいますが、ほんの一部です)
「途上国でボランティアのできるタフで語学力のある人材をとりたい!」と考える企業は多いようですし、帰国隊員と企業を結び付けるサイト(パートナー)があるのも確かです。
他方、このようなサイトをチェックして頂ければわかるように、
日本の平均年収といわれる約430万円に達している求人は非常に少ないです。
また、国際協力に関する非正規の求人も多いです。
教職や医療系の資格を持っていない、特に文系出身の方が帰国後、民間企業等に就職したいと考える場合、注意が必要です。
変わってきつつありますが、
「30歳前半までを未経験でも採用する」という日本企業の風土を考えると専門性が低く、年齢も高い方程帰国後の再就職に苦労されている。
あるいは、低年収で我慢してしまう。
また、税金を免除されるNISA制度等、日本でも老後を意識して、若いうちから資産形成を行うという流れが出来つつあります。
日本の証券会社を使い投資をしている方は、海外生活をしている間は新規の投資(NISAの積み立ても同様)が出来ないということにも注意する必要があるでしょう。
解決策~青年海外協力隊に参加する前からの準備や情報収集
投資関連はどうしようもありません。
強いて言うなら、途上国へ赴任する前にせめて特定口座に可能な限り新規積立をしておく位かと思います。
他方、年収アップならまだ対策可能です。
例えば、以下の対策が考えられます。
①途上国へ赴任する前から、語学や有用な資格取得に向け自分の市場価値を上げておく。
②赴任前から途上国の経験を基に、どのような職に就くか、そのキャリアプランを整理しておく。
③赴任中に様々な民間・JICA関係者らと人脈を作って情報収集する。
このボランティア制度に参加する方のほとんどは、前職を辞めて帰国後は再就職しなければいけない方々です。
とはいえ、途上国で2年間も生活していたら、それぞれの価値観に変化が生まる、という話もよく聞きます。
年収に固執しなければ、NPOやNGOも含めた就職等意外と幅広くあることも事実です。
そこは皆さんのライフプラン次第かと思います。
因みに、国際協力に関するキャリアについて、民間やNGO/NPO、国際機関等幅広く整理されている、こちらの本が非常におすすめです。
私は赴任前から赴任中、「穴が開くほど」この本を読んで参考にしていました!
日本の常識がほぼ通用せず、メンタルがやられる可能性もある
途上国生活は精神的につらい
日本の常識は世界の非常識かもしれません。
例えば、午前8時開始予定といっていたスタッフミーティングが、結局午前11時開始なんてことはアフリカではよくあります。
ミーティングの内容によりますが、結局午後開催!
なんてことも多々ありました(笑)
「アフリカンタイム」なんて言葉もありますね。
少しだけネタバレをすると、それくらいアフリカ人は「予定ではなく、目の前の家族や出来事に注力している」、「時間厳守は彼らの習慣にはない」と私は理解していました。
その他、
アフリカ人から見たら、我々日本人含めて「肌の白い」人種は皆お金持ちです。
逆差別のように、他のアフリカ人にはあまり要求しないのに、我々にだけ「コイン・プリーズ」等と要求してくることも日常茶飯事。
「ボランティアとして途上国に来て、彼らの役に立ちたかったのにそんな気になれない」
このように、精神的につらい思いを経験することもあります。
中には、せっかく途上国に来たのに、「ひきこもり」になってしまう人もいます。
解決策~途上国の人々の立場に立つ
上記のような出来事に遭遇しても「楽しむ」、「相手の立場に立つ」気持ちが非常に重要です。
是非、この視点をずっと持っていてください。
アフリカ人からすれば、我々のような「肌の白い」人間たちは確かにお金を持っているように見えます。
また、彼らは日本とは全く違う文化の中で、何千年も先祖からの教えを基に生きてきました。
「日本人と同じ感覚」を持つなんて不可能です。
「アフリカンタイム」というのなら、近くの子どもたちとおしゃべりしながら、じっと同僚を待つ。
「お金をくれ」と言われたら、逆に何かの冗談を言って笑わせる。
この位、相手との違いも意識しつつ、その違いを楽しんでください。
※因みに、日本人のためのアフリカ理解にはこのような本がおすすめです。
病気や事件に巻き込まれる可能性がある
途上国での病気や事件・事故
日本とは環境が全く違います。
マラリアや黄熱病、破傷風等途上国ならではの病気もたくさんあります。
また、アジア人含めて「白い肌」の人はアフリカでは間違いなくお金持ち。
空き巣に入られて、何か盗まれるということもあります。
病気にかかりたくない、事件に巻き込まれるのは絶対嫌だと思うのならば、JICAボランティアはやはりあきらめましょう。
とはいえ、前回のメリットの部分でも触れたように、例えば
●抗マラリア薬をJICA事務所から無料で配布される。
●狂犬病や黄熱病といったワクチンを無料で接種できる。
●治安に関する情報を逐一メールで受け取れる。
等非常に有難い制度もついてきます。
解決策~JICA側の指示を守る、現地で人間関係を良好にする
病気については、各地域で必須と言われているワクチンを打ち、現地の看護師(各JICA事務所に滞在)の指示をしっかり守りましょう。
例えば、抗マラリア薬をしっかり毎日服用する等です。
基本的なことを守らず、病気になる人はいますが、そうでない場合はほとんど聞きません。
事件についての回避策。
それは、住居の周りの人々と仲良くなることです。
例えば、猿のようにアフリカの村に住むなら、その現地語を積極的に覚え、たどたどしくても挨拶を欠かさず、何か困っていることがあれば聞いてみるという極当たり前のことです。
彼らは、外国人を「金持ちだ=金づるだ」と思っている半面、「現地語話す=我々の仲間だ」なんてことも思っています。
自分たちと同じ言葉を話し、同じ生活をし、仲よくしようとしている外国人を彼らはそうそうは襲わないですよ。
都心に住む人はその限りではなく、同期の中で空き巣等の被害にあった人もいました。
一方、猿のように田舎に暮らし、それなりに現地のアフリカ人と仲良く暮らしていた人の中で、何かしら襲われた等という話は聞いたことありません。
日暮れ後は出歩かない等の基本的なことを守り、彼らと仲良く生活していきたいですね。
まとめ
以上、4つのデメリットと猿からの解決策をご提示しました。
4つの内、どれか一つに当てはまるようであれば、青年海外協力隊(JICA海外協力隊またはJICAボランティア)への参加はおすすめしません。
もし当てはまらないのであれば、青年海外協力隊に参加することを前向きに検討してみるべきでしょうう。
前回の記事(メリットに焦点を当てた)も読んで、総合的に考えてみて下さい。
皆さんにとって、非常に大切な2年間ですからね。
ただ、参加をすればきっと、人生観の変化する、お金に換えることのできない経験を得ることが出来ますよ!
アフリカ等途上国でボランティア活動を行いたいけど、家族等の事情からやはり参加できない。。。
ここまで、この記事を読んでくれた方の中には、このような感想を抱いた方もいるかと思います。
そういった方には、アフリカ等で素晴らしい活動をしている団体さんに対して、「寄付」という行動で国際貢献をするという方法もありますよ。
団体さんによっては、「手紙のやり取り」や「現地訪問」も可能です。
このボランティア制度を含めて、様々な途上国との関わり方を検討してみて下さい!
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